交通事故の痛みはなぜ長引く?研究でわかった身体とストレスの関係

2026年10月26日

先日、以前一緒に働いていた元同僚が、バイクで交通事故に遭いました。

顔の骨を複数箇所骨折し、股関節も脱臼するという大きなケガを負い、現在も治療を続けています。

私自身、柔道整復師として多くのケガや身体の不調に向き合ってきましたが、身近な人が大きな事故に遭うと、改めて交通事故の怖さを感じます。

今回、治療だけでなく、今後の生活や補償についても不安があるだろうと考え、当院が提携している弁護士を紹介しました。

交通事故は、身体のケガだけでなく、仕事や生活、精神的な負担にも影響します。

そして、交通事故後の痛みが長引く背景には、身体の損傷に加えて、ストレス反応や神経系の働きなど、さまざまな要因が関係することが研究からわかってきました。

今回は、交通事故後の痛みが長引く理由と、回復に向けて大切なことを医学研究をもとに解説します。

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1.交通事故後の痛みは、どのくらい続く?

交通事故によるケガの回復には個人差があります。

事故直後の痛みが徐々に軽くなる人もいれば、数か月以上、首や腰などの痛みに悩まされる人もいます。

2008年に発表されたシステマティックレビューでは、むち打ち後の回復について67論文、38の研究集団を分析しました。

その結果、事故後の最初の3か月間に回復する人が多く、それ以降は回復する人の割合が緩やかになる傾向が報告されています。

さらに、2016年に発表された米国の研究では、交通事故後に救急外来を受診した948人を追跡しました。

事故前から広範囲の慢性疼痛があった人を除く895人を分析したところ、約22%にあたる192人が、事故後の早い段階から広い範囲に痛みを抱え、その状態が長期に続くグループに分類されました。

この研究で興味深いのは、痛みが少しずつ全身に広がるという経過だけでなく、事故後の早い段階から複数の場所に痛みが現れ、その状態が続くケースがあったことです。

交通事故後の身体を評価するときには、首や腰など一つの場所だけでなく、全身の症状を確認することが大切です。

2.交通事故後の痛みが長引く理由

交通事故後の痛みには、大きく分けて身体の組織への影響と、痛みを感じる神経系の働きが関係します。

筋肉・靱帯・関節などへの影響

交通事故では、衝突によって身体に急激な力が加わります。

代表的なものが、首のむち打ちです。

衝撃によって首が急激に動かされると、筋肉や靱帯、関節などに負荷がかかり、首の痛みや動かしにくさ、頭痛などが現れることがあります。

事故の状況によっては、腰や背中、肩などにも症状が現れます。

こうした組織への負荷や損傷は、事故後の痛みを考えるうえで重要な要素です。

痛みを感じる神経系の働き

痛みは、身体の組織から伝わる情報を、脳や脊髄を含む神経系が処理することで生じます。

痛みが長く続く場合には、痛みの信号に対する神経系の反応が変化することもあります。

例えば、通常であればそれほど痛くない刺激を強く感じたり、痛みのある範囲が広がったりすることがあります。

交通事故後の慢性疼痛についても、こうした痛みの感受性の変化が研究されています。

つまり、交通事故後の痛みを理解するには、筋肉や関節などの状態と、神経系の働きの両方に目を向ける必要があります。

3.事故のストレスは、身体の痛みと関係する?

交通事故は、突然の衝撃や恐怖を伴う出来事です。

事故後には、強い緊張や不安、眠りにくさ、事故の場面を繰り返し思い出すといった反応が現れることがあります。

こうしたストレス反応と、痛みが長引くことの関係を調べた研究があります。

948人を追跡した研究

2017年に発表された研究では、交通事故後24時間以内に救急外来を受診した948人について、事故から1年間の経過を調べました。

研究者たちは、首や背中、腰などの痛みと、事故後のストレス反応の関係を分析しました。

その結果、事故後の痛みと、強い警戒状態や事故の記憶が繰り返し浮かぶといったストレス症状には関連が認められました。

特に、事故後早い時期の強い警戒反応は、その後の痛みが続くことと関連していました。

この研究は、交通事故後の回復を考える際に、身体の痛みだけでなく、事故によるストレス反応にも目を向ける重要性を示しています。

ストレス・睡眠・痛みのつながり

強いストレスを感じると、身体が緊張したり、眠りにくくなったりすることがあります。

また、痛みが続くことで睡眠が妨げられ、日中の疲労感や不安につながる場合もあります。

痛み、ストレス、睡眠は、それぞれが関係し合う要素です。

交通事故後に眠れない状態が続く場合には、痛みの程度だけでなく、事故への不安や生活環境の変化なども確認したいポイントになります。

身体の回復を考える際には、こうした生活面の変化にも目を向けることが大切です。

4.痛みが長引きやすい人には、どんな特徴がある?

2013年に発表されたシステマティックレビューでは、むち打ち後の回復に関係する要因について、複数の追跡研究をまとめて分析しました。

その結果、回復が長引くことと関連していた要因には、次のようなものがありました。

  • 事故後の首の痛みが強い
  • 事故後から頭痛がある
  • 首の痛みによって日常生活が大きく制限されている
  • 事故前から首に痛みがあった
  • 腰痛など、首以外にも症状がある
  • 痛みについて強い不安や悲観的な考えがある

特に重要なのは、事故後の痛みの強さと、日常生活への影響です。

例えば、同じ首の痛みでも、普段どおりに仕事ができる人と、痛みで仕事や家事が難しくなっている人では、困っている内容が異なります。

そのため、痛みの強さだけでなく、身体の動きや生活への影響まで確認することが大切になります。

5.交通事故後のリハビリで大切なこと

交通事故後のリハビリでは、身体の状態に合わせて、無理のない範囲で動きを取り戻していくことが大切です。

むち打ちについては、長期間の固定よりも、適切な運動や日常生活への復帰を支援する方法が研究されています。

2016年に発表された臨床ガイドラインでは、むち打ちに対して、患者への説明、運動、徒手療法などを組み合わせた対応が選択肢として示されています。

徒手療法とは、施術者が手を使って筋肉や関節などに働きかける方法です。

また、2014年に発表された研究では、慢性化したむち打ち患者172人を対象に、20回の運動プログラムと、助言を中心とした対応を比較しました。

その結果、14週間後、6か月後、12か月後の痛みについて、両群の間に明確な差は認められませんでした。

この研究からは、リハビリの回数だけでなく、患者さんの状態や生活に合わせて必要な支援を考える重要性がうかがえます。

リハビリで目指すのは、痛みの軽減だけでなく、首や腰などの動きを取り戻し、仕事や家事、趣味などの日常生活へ復帰していくことです。

骨折や脱臼、神経損傷などを伴う場合には、医師の診断と治療方針に基づき、適切な時期に専門的なリハビリを進める必要があります。

6.よつ葉接骨院が交通事故後の方にできること

交通事故に遭ったとき、何から始めればよいのかわからない方も多いと思います。

身体の痛みはもちろん、病院への受診、保険会社とのやり取り、仕事や補償の問題など、さまざまな不安が生じることがあります。

よつ葉接骨院では、交通事故後の身体のケアに加え、必要に応じて医療機関や専門家へのご案内も行っています。

① 身体の状態を確認し、一人ひとりに合わせた施術

当院では、柔道整復師が問診や身体の評価を行い、痛みのある場所だけでなく、関節の動きや筋肉の状態、日常生活への影響などを確認します。

例えば、首の痛みがある場合には、どの方向に動かしにくいのか、どのような動作で痛みが出るのか、周囲の筋肉がどのような状態なのかを確認します。

そのうえで、医師による診断や治療方針を踏まえ、当院で対応可能な範囲の施術を検討します。

筋肉や関節へのやさしい徒手的なアプローチを中心に、必要に応じて身体の動かし方やセルフケアについてもお伝えします。

② 病院に行っていない方には、提携医療機関をご紹介

交通事故後は、事故直後に痛みが少なくても、時間が経ってから首や腰などに症状が現れることがあります。

まだ病院を受診していない方には、医療機関での診察をおすすめしています。

当院では、必要に応じて提携している医療機関をご紹介することも可能です。

医師による診断や検査を受け、ケガの状態を確認することが、その後の適切な治療につながります。

③ 弁護士・行政書士への相談もサポート

交通事故後には、保険会社とのやり取りや過失割合、治療費、休業損害、後遺障害などについて、疑問や不安が生じることがあります。

当院では、必要に応じて提携している弁護士や行政書士をご紹介しています。

法律上の交渉や損害賠償については弁護士、行政書士が取り扱える範囲の書類作成や手続きについては行政書士など、それぞれの専門分野に応じた相談先をご案内します。

④ ご自身の過失割合が高い場合も、まずはご相談ください

「自分にも事故の原因があるから、治療費は自己負担になるのでは?」

「過失割合が高いと、接骨院には通えないのでは?」

このように考えている方もいらっしゃるかもしれません。

交通事故の補償や保険の取り扱いは、事故の状況、加入している保険、過失割合などによって異なります。

ご自身の過失割合が高い場合でも、利用できる保険や補償がある可能性があります。

事故の状況によって必要な確認事項が異なるため、まずはご相談ください。

当院でわかる範囲のご案内を行い、専門的な判断が必要な場合には、弁護士や保険会社などへの確認をおすすめしています。

⑤ 身体の回復から日常生活への復帰まで

交通事故後の身体の不調は、仕事や家事、睡眠、趣味など、日常生活のさまざまな場面に影響します。

当院では、身体の状態を確認しながら、日常生活で困っている動作や負担の大きい場面についてもお話を伺います。

施術に加えて、身体の動かし方や生活上の工夫などをお伝えし、無理のない日常生活への復帰をサポートします。

まとめ|交通事故後の痛みは、身体と生活の両面から考える

交通事故後の痛みが長引く背景には、筋肉や関節などの損傷、神経系の働き、ストレス反応、睡眠や生活環境など、さまざまな要因が関係しています。

医学研究では、事故直後の痛みの強さや日常生活への影響、事故後のストレス反応などが、その後の回復経過と関連することが報告されています。

交通事故後は、医療機関でケガの状態を確認し、必要な治療やリハビリを受けることが大切です。

また、仕事や生活、補償などについて困ったことがあれば、必要に応じて専門家のサポートを受けることも選択肢になります。

よつ葉接骨院では、身体のケアに加え、提携医療機関や弁護士・行政書士へのご紹介など、交通事故後のさまざまなお悩みについてご相談を承っています。

交通事故後の首・肩・腰などの不調や、受診先・補償についてお困りの方は、お気軽にご相談ください。

参考文献

  1. Kamper SJ, et al. Course and prognostic factors of whiplash: a systematic review and meta-analysis. Pain. 2008;138(3):617–629.
  2. McLean SA, et al. Chronic widespread pain after motor vehicle collision typically occurs via immediate development and non-recovery: results of an emergency department-based cohort study. Pain. 2016;157(2):438–444.
  3. Walton DM, et al. Risk factors for persistent problems following acute whiplash injury: update of a systematic review and meta-analysis. J Orthop Sports Phys Ther. 2013.
  4. Stress-related psychological symptoms contribute to axial pain persistence after motor vehicle collision: path analysis results from a prospective longitudinal study. 2017.
  5. Michaleff ZA, et al. Comprehensive physiotherapy exercise programme or advice for chronic whiplash (PROMISE): a pragmatic randomised controlled trial. Lancet. 2014;384(9938):133–141.
  6. Bussières AE, et al. The Treatment of Neck Pain-Associated Disorders and Whiplash-Associated Disorders: A Clinical Practice Guideline. J Manipulative Physiol Ther. 2016.

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執筆者紹介

宮寺 雅佳

執筆者:柔道整復師 宮寺 雅佳(よつ葉接骨院 院長)

臨床現場で19年以上、これまで3万人以上の方の身体のお悩みに向き合ってきました。

よつ葉接骨院では、「痛い場所だけにとらわれず、身体全体を見ること」を大切にしています。
腰痛や肩こりなどの不調は、痛みを感じている場所だけでなく、身体の動きや活動量、日々の過ごし方など、さまざまな要素が関係していることがあります。

そのため、問診や身体の動き、姿勢などを確認し、一人ひとりの状態に合わせて施術やセルフケアをご提案しています。

目指しているのは、痛みだけにとらわれず、その方が元気な毎日を送れるようサポートすること。
この記事も、医学的な情報をもとに、できるだけ分かりやすくお伝えすることを心がけて作成しています。

よつ葉接骨院 / よつ葉整体院(横浜市鶴見区・京急生麦駅徒歩1分)

肩こり・頭痛・腰痛・自律神経の乱れなど、慢性的な不調を中心に、一人ひとりの身体の状態に合わせた施術を行っています。

国家資格を持つ院長が、AI姿勢分析や可動域検査などを用いて原因を確認し、筋肉や関節だけでなく、身体全体のバランスを考慮した施術をご提供しています。

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