繰り返す腰痛、痛い場所だけが原因とは限りません|慢性腰痛を身体全体から考える
2026年08月11日
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「腰が痛くなるたびに、腰を揉んだりストレッチしたりしている」
「そのときは楽になっても、しばらくするとまた腰が気になる」
「姿勢が悪いから?骨盤が歪んでいるから?」
繰り返す腰痛に悩んでいると、「腰のどこが悪いんだろう」と痛い場所に原因を探したくなるかもしれません。
しかし、慢性的な腰痛は痛みを感じている場所だけでは説明できない場合があります。
現在では、慢性腰痛は身体的な要素だけでなく、活動量や仕事での負担、睡眠、心理・社会的な要素など、さまざまな要因を含めて考えることが重要とされています。WHO(世界保健機関)も、慢性一次性腰痛について、一つの介入だけに頼るのではなく、その人に影響している身体的・心理的・社会的要素を考慮した包括的な対応を推奨しています。
この記事では、
- なぜ腰痛は繰り返すのか
- 「姿勢が悪い=腰痛の原因」と言い切れるのか
- 腰だけをケアすればよいのか
- 自分でできる対策
- 医療機関へ相談したほうがよい腰痛
- よつ葉接骨院が身体全体を見る理由
を、現在分かっている医学的な情報と当院の考え方を分けながら解説します。
繰り返す腰痛、「痛い場所=原因」とは限りません
まず知っていただきたいのは、
「腰が痛い=腰のその場所だけに原因がある」とは限らない
ということです。
ただし、これは「腰には問題がない」「腰以外のどこかに本当の原因が隠れている」という意味でもありません。
WHOによると、腰痛の約90%は「非特異的腰痛」とされています。これは、骨折や感染症などのように、痛みを一つの病気や組織損傷だけではっきり説明できない腰痛を指します。
そのため、
「骨盤の歪みが原因」
「この筋肉が硬いから」
「姿勢が悪いから」
と、慢性腰痛の原因を一つに決めつけるのは慎重であるべきです。
慢性腰痛では、身体の状態はもちろん、普段の活動、仕事、睡眠、心理社会的な状況なども含めて、その人ごとに考えていくことが大切です。WHOのガイドラインでも、慢性一次性腰痛では身体的・心理的・社会的な要素を考慮した、人を中心とする包括的なケアが重視されています。
つまり大切なのは、**「腰以外に原因を探すこと」ではなく、「腰だけで判断しないこと」**なのです。
そもそも慢性腰痛とは?
日本の「腰痛診療ガイドライン2019(改訂第2版)」では、腰痛を症状が続く期間によって大きく、
| 分類 | 期間 |
|---|---|
| 急性腰痛 | 4週間未満 |
| 亜急性腰痛 | 4週間以上3か月未満 |
| 慢性腰痛 | 3か月以上 |
に分類しています。
また、国際疼痛学会(IASP)でも、3か月を超えて持続または反復する痛みを慢性疼痛としています。慢性疼痛は、生物学的・心理的・社会的な要素が関係する多因子的なものとして捉えられています。
ここで注意したいのが、
「痛みが続いている=腰の組織がずっと傷つき続けている」
とは限らないことです。
一方で、長く続いているからといって「気にしなくてよい」という意味でもありません。
腰痛の中には、骨折、感染症、神経に関わる病気など、医療機関での評価が必要なものもあります。
大切なのは「慢性腰痛だから全部同じ」と考えるのではなく、まず状態を適切に確認することです。
なぜ腰痛は繰り返す?一つの原因では説明できないことも
「何度も繰り返すのだから、どこかに原因が残っているはず」
そう考える方もいるでしょう。
しかし慢性腰痛では、必ずしも一つの原因を見つければすべて解決するわけではありません。
身体への負荷や活動量
仕事で長時間座っている、立ち仕事が続く、重いものを扱う、身体を動かす機会が少ないなど、日常生活にはさまざまな身体的負荷があります。
WHOは非特異的腰痛のリスク要因として、身体活動量の少なさや仕事上の強い身体的負荷などを挙げています。
ただし、
「座り仕事だから腰痛になった」
「運動不足だけが原因」
と単純に結論づけることはできません。
腰痛は複数の要因が重なっている可能性があるため、その人がどのような生活を送り、どのような場面で症状が出るのかを確認することが重要です。
身体の動き方
腰は単独で動いているわけではありません。
立つ、座る、歩く、しゃがむ、物を持ち上げるといった動作では、腰だけでなく、股関節や胸郭など身体のさまざまな部分が協調して動きます。
そのため、腰痛がある方の身体を評価するときに、腰だけではなく身体全体の動きを確認することには意味があります。
ただし、
「股関節が硬いから腰痛になる」
「骨盤が歪んでいるから腰が痛い」
など、特定の身体的特徴をそのまま原因と断定することは避ける必要があります。
身体全体を見る目的は、「真犯人」を探すことではありません。その人がどのように身体を使い、どのような動作が負担になっているのかを考えるための一つの材料です。
睡眠と腰痛の関係
意外かもしれませんが、慢性腰痛を考えるうえでは睡眠も無視できません。
系統的レビューでは、慢性腰痛と睡眠障害、睡眠時間や睡眠の質などとの関連が報告されています。別の系統的レビューでも、慢性的な脊椎の痛みと睡眠には関連がみられています。
ただし、これだけで「睡眠不足が腰痛の原因」と断定することはできません。
痛いから眠れないこともあれば、睡眠状態が痛みと関連している可能性もあり、関係は単純ではありません。
そのため、繰り返す腰痛では「腰をどうするか」だけではなく、最近きちんと眠れているかという視点も大切です。
心理社会的な要素も無関係ではありません
「ストレスが腰痛の原因です」と断定するのも適切ではありません。
一方で、心理・社会的な要素を完全に無視することも、現在の慢性腰痛の考え方とは一致しません。
日本の腰痛診療ガイドラインでも心理社会的因子と腰痛の関係が取り上げられています。WHOも慢性一次性腰痛について、身体だけでなく心理・社会的な要素を含めて評価し、その人に合わせたケアを行うことを重視しています。
これは「腰痛は気持ちの問題」という意味ではありません。
身体と心、そして毎日の生活を切り離さずに考えるということです。
「姿勢が悪いから腰痛」は本当?
慢性腰痛の方からよく聞くのが、
「姿勢が悪いと言われました」
「反り腰だから腰が痛いのでしょうか?」
「骨盤を正しい位置に戻せば治りますか?」
という相談です。
姿勢と腰痛については、思っているほど単純ではありません。
脊椎の姿勢や身体的負荷と腰痛の因果関係を調べた「系統的レビューの系統的レビュー」では、これらが腰痛の原因になるという点について一致した結論は得られていません。
したがって、
猫背だから腰痛になる
反り腰を直せば腰痛が治る
といった断定はできません。
もちろん、特定の姿勢で症状が強くなる方はいます。
その場合、その姿勢や動作を確認することは大切です。しかし、「理想の姿勢」を一日中維持しようとして身体を固める必要はありません。
姿勢の形だけを見るのではなく、同じ姿勢が長時間続いていないか、無理なく身体を動かせているか、どのような状況で症状が変化するのかまで含めて考えることが大切です。
腰を揉んでも繰り返すなら、腰だけにこだわらない
「腰を揉んでもらうと、その日は楽になる」
このような経験がある方もいるでしょう。
マッサージなどのケアをすべて否定する必要はありません。WHOの慢性一次性腰痛ガイドラインでも、マッサージを含む一部の身体的介入は選択肢として挙げられています。
一方、慢性腰痛への対応を受け身のケアだけで完結させないことも重要です。
WHOは、教育やセルフケア支援、運動、一定の身体的介入、心理的介入などを選択肢として挙げ、その人に応じて複数の方法を組み合わせる考え方を示しています。
また、Cochraneの系統的レビューでは、慢性非特異的腰痛に対する運動療法は、無治療・通常ケア・プラセボと比較して痛みを軽減する可能性があることが、中等度の確実性のエビデンスとして示されています。ただし、効果の大きさや個人差には注意が必要です。
つまり、
「腰を揉むか、運動するか」
という二択ではありません。
その方の状態に合わせて、身体を楽にするケアと、自分で身体を動かすこと、そして日常生活を整えることを組み合わせて考えることが大切です。
繰り返す腰痛のために今日からできること
慢性腰痛だからといって、特別なことをたくさん始める必要はありません。
まずは次のようなことから考えてみましょう。
1.必要以上に身体を動かすことを避けない
「腰が悪くなるのが怖いから」と、必要以上に活動を制限すると、活動量そのものが減ってしまうことがあります。
WHOでは慢性一次性腰痛に対する運動プログラムを推奨しています。また、日本の腰痛診療ガイドラインでも活動性の維持や運動療法が検討されています。
ウォーキングや体操など、続けられる活動から始める方法があります。
ただし、どの運動が適しているかは状態によって異なります。無理に痛みを我慢して行う必要はありません。
2.「正しい姿勢」にこだわりすぎない
姿勢を意識すること自体が悪いわけではありません。
しかし、「少し猫背になったら腰が悪くなる」と怖がる必要もありません。
長時間同じ姿勢が続くなら、ときどき立つ、歩く、楽な姿勢に変えるなど、姿勢を固定するより変化をつくることを意識してみましょう。
3.睡眠にも目を向ける
慢性腰痛と睡眠には関連が報告されています。
「腰痛対策=腰のストレッチ」と考えるだけでなく、
「最近よく眠れているか」
「痛みで何度も目が覚めていないか」
なども振り返ってみてください。
睡眠障害が強く続く場合には、腰痛とは別に医療機関へ相談することも選択肢です。
4.痛みだけでなく「できること」にも目を向ける
慢性腰痛では、痛みをゼロにすることだけを目標にすると、日々の小さな変化を見落としてしまうことがあります。
「少し長く歩けた」
「仕事中に動けるようになった」
「趣味を再開できた」
など、生活の中で何ができるようになったかも大切な指標です。
WHOも腰痛のリハビリテーションについて、日常生活の自立や仕事・社会活動への参加、ウェルビーイングを重視しています。
腰痛でも医療機関への相談を優先したいケース
腰痛の多くは非特異的腰痛ですが、すべての腰痛を「筋肉の問題」「慢性腰痛だから大丈夫」と判断してはいけません。
次のような場合は、接骨院や整体だけで判断せず、医療機関への相談を優先してください。
- 足の力が入りにくいなど、明らかな筋力低下がある
- 排尿・排便に異常が生じている
- 発熱などを伴って腰が強く痛む
- 転倒や事故など、強い外傷のあとから痛みが続いている
- がんや感染症、骨折などが疑われる背景がある
- 症状が長期間改善しない、または悪化している
腰痛の評価では、馬尾症候群、悪性腫瘍、骨折、感染症など重篤な疾患を疑う所見がある場合、医学的な評価が必要です。
「いつもの腰痛だから」と自己判断せず、普段とは違う症状がある場合は適切な医療機関に相談しましょう。
よつ葉接骨院が「痛い腰だけ」を見ない理由
ここからは、研究結果そのものではなくよつ葉接骨院として大切にしている考え方です。
当院では、腰が痛い方に対して、痛みのある腰だけを見て施術方針を決めることはしていません。
なぜなら、その方が困っていることは「腰が痛い」という症状だけではないことが多いからです。
「朝起きると腰がつらい」
「仕事をしていると夕方に痛くなる」
「痛みが気になって運動を避けている」
「何度も繰り返すので不安になっている」
同じ「腰痛」でも、困っていることや生活背景は一人ひとり違います。
そのため当院では、腰だけではなく、身体全体のバランスや動き、普段の生活なども確認することを大切にしています。
AI姿勢解析も活用しますが、これは「姿勢を見れば腰痛の原因が分かる」というものではありません。身体の状態を確認するための一つの情報として活用します。
また、当院が大切にしているのは、施術を受ける時間だけではありません。
睡眠、運動など毎日の過ごし方にも目を向けながら、その方が自分らしい生活を送りやすくなるようサポートすることを重視しています。
「痛いところだけを何とかする」のではなく、その先にある元気な毎日を考える。
これが、よつ葉接骨院の考え方です。
なお、症状から医療機関での検査や診察が必要と判断した場合には、整体だけで対応するのではなく、医療機関への受診をご案内します。
まとめ|繰り返す腰痛は、身体全体と毎日の生活にも目を向けよう
繰り返す腰痛では、つい「腰のどこが悪いのか?」と原因を一つに絞りたくなります。
しかし、慢性腰痛は一つの要因だけでは説明できないことがあります。
だからといって、
「腰以外の○○が本当の原因」
と、新たな原因を決めつける必要もありません。
大切なのは、痛みのある場所だけではなく、身体の状態、活動、睡眠、心理社会的な背景など、その人全体を見ながら考えることです。これはWHOが示している慢性一次性腰痛の包括的・個別的なケアの考え方とも共通しています。
腰痛を繰り返し、
「腰ばかりケアしているけれど、これでいいのかな」
「自分の身体を一度きちんと見てほしい」
と感じている方は、ご相談ください。
よつ葉接骨院では、痛い場所だけにとらわれず身体全体の状態を確認し、毎日の生活まで含め、その方に合わせたサポートを大切にしています。
参考文献
- World Health Organization. WHO guideline for non-surgical management of chronic primary low back pain in adults in primary and community care settings. World Health Organization; 2023.
- World Health Organization. Low back pain. 2023.
- 日本整形外科学会・日本腰痛学会 監修. 『腰痛診療ガイドライン2019 改訂第2版』. 南江堂; 2019.
- Hayden JA, Ellis J, Ogilvie R, Malmivaara A, van Tulder MW. Exercise therapy for chronic low back pain. Cochrane Database Syst Rev. 2021;9(9):CD009790. doi:10.1002/14651858.CD009790.pub2.
- Swain CTV, Pan F, Owen PJ, Schmidt H, Belavy DL. No consensus on causality of spine postures or physical exposure and low back pain: A systematic review of systematic reviews. J Biomech. 2020;102:109312. doi:10.1016/j.jbiomech.2019.08.006.
- Kelly GA, Blake C, Power CK, O’Keeffe D, Fullen BM. The association between chronic low back pain and sleep: a systematic review. Clin J Pain. 2011;27(2):169-181. doi:10.1097/AJP.0b013e3181f3bdd5.
- Chang JR, et al. Are Changes in Sleep Quality/Quantity or Baseline Sleep Parameters Related to Changes in Clinical Outcomes in Patients With Nonspecific Chronic Low Back Pain?: A Systematic Review. Clin J Pain. 2022;38(4):292-307. doi:10.1097/AJP.0000000000001008.
- George SZ, Fritz JM, Silfies SP, et al. Interventions for the Management of Acute and Chronic Low Back Pain: Revision 2021. J Orthop Sports Phys Ther. 2021;51(11):CPG1-CPG60. doi:10.2519/jospt.2021.0304.
- Expert Panel on Neurological Imaging. ACR Appropriateness Criteria® Low Back Pain: 2021 Update. J Am Coll Radiol. 2021. doi:10.1016/j.jacr.2021.08.002.
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執筆者紹介
執筆者:柔道整復師 宮寺 雅佳(よつ葉接骨院 院長)
臨床現場で19年以上、これまで3万人以上の方の身体のお悩みに向き合ってきました。
よつ葉接骨院では、「痛い場所だけにとらわれず、身体全体を見ること」を大切にしています。
腰痛や肩こりなどの不調は、痛みを感じている場所だけでなく、身体の動きや活動量、日々の過ごし方など、さまざまな要素が関係していることがあります。
そのため、問診や身体の動き、姿勢などを確認し、一人ひとりの状態に合わせて施術やセルフケアをご提案しています。
目指しているのは、痛みだけにとらわれず、その方が元気な毎日を送れるようサポートすること。
この記事も、医学的な情報をもとに、できるだけ分かりやすくお伝えすることを心がけて作成しています。
よつ葉接骨院 / よつ葉整体院(横浜市鶴見区・京急生麦駅徒歩1分)
肩こり・頭痛・腰痛・自律神経の乱れなど、慢性的な不調を中心に、一人ひとりの身体の状態に合わせた施術を行っています。
国家資格を持つ院長が、AI姿勢分析や可動域検査などを用いて原因を確認し、筋肉や関節だけでなく、身体全体のバランスを考慮した施術をご提供しています。
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