なかなか治らない慢性腰痛、実は「脳」が関係している?

2026年09月22日

「腰が痛いから、腰のどこかが悪いはず」

「前にかがむと痛いから、なるべく曲げない方がいい」

長く腰痛が続いていると、そう考えるのは自然なことです。

腰痛では、筋肉や関節、神経など身体の状態を確認することが大切です。

そして近年の痛み研究では、慢性腰痛の一部について、もう一つ注目されていることがあります。

それが、脳や神経系による痛みの処理、そして「この動きをすると痛そう」「また痛くなるかもしれない」という予測や恐怖です。

「脳が関係している」と聞くと、

「気のせいってこと?」

と思うかもしれません。

そういう意味ではありません。

痛みは実際に本人が感じているものです。

今回は、なかなか治らない慢性腰痛と脳にはどのような関係があるのか、近年の研究をもとに一緒に見ていきましょう。

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なかなか治らない慢性腰痛、なぜ痛みが続く?

腰痛が起きたばかりの時期には、筋肉や靱帯などの組織が傷ついたことによる痛みも考えられます。

多くの組織は時間とともに回復していきます。

それでも3か月、半年、1年と腰痛が続く方がいます。

慢性腰痛では、現在の身体の状態だけでなく、身体から入ってくる情報を脳や神経系がどのように受け取り、痛みとして処理しているのかも確認したいポイントです。

つまり、

「痛い=今もその場所が傷つき続けている」

という単純な関係だけで痛みが決まっているわけではありません。

病院で「大きな異常はありません」と言われたのに痛みが続いている方や、長期間腰痛を繰り返している方では、こうした痛みの仕組みを知ることが、身体との付き合い方を見直すきっかけになる場合があります。

痛みには「脳」も関係している

私たちが痛みを感じるためには、脳の働きが欠かせません。

痛みは、腰から脳へ「痛い」という信号がそのまま送られてくるだけの仕組みではありません。

身体から入ってきた情報を脳や神経系が処理することで、私たちは痛みを経験します。

その過程には、

・過去に痛かった経験
・「また痛くなりそう」という予測
・動くことへの恐怖
・痛みに向いている注意
・そのとき置かれている状況

なども関係します。

たとえば、以前ぎっくり腰になったとき、前にかがんで激痛が走ったとします。

その経験があると、次に前屈するとき、

「また痛くなるかも」

と警戒するのは自然な反応です。

私たちの脳は、過去の経験や現在の身体から入ってくる情報などをもとに、これから起こることを予測しています。

そのため、長く痛みが続いている方では、身体の状態とともに、「この動きは危険」という予測や警戒にも目を向けることが大切です。

脳と痛みの関係を考えることは、痛みを「気持ちの問題」にすることではありません。

本当に感じている痛みが、どのような仕組みで続いているのかを考えるための一つの視点です。

「この動きは痛い」という予測が痛みに影響することも

「前屈すると腰が痛い」という経験を何度もすると、

前屈する

痛くなる

前屈するのが怖くなる

身体を守ろうとして力が入る

という反応が起こることがあります。

さらに、

「腰を曲げたら傷めるのでは?」

「またぎっくり腰になったらどうしよう」

という不安があると、動作への警戒が強くなることもあります。

こうした痛みに対する予測や恐怖、身体を守ろうとする反応は、慢性腰痛を考えるうえで確認しておきたいポイントです。

そこで近年研究されているのが、痛みに対する捉え方を見直し、安全に身体を動かせる経験を重ねていく方法です。

慢性腰痛で注目された「痛みの捉え方を変える」研究

2021年、慢性腰痛のある151人を対象とした研究が発表されました。

参加者の腰痛は平均約10年間続いていました。

研究では参加者を、

・PRT(疼痛再処理療法)を受けるグループ
・生理食塩水を腰に注射するプラセボ治療のグループ
・普段の治療を続けるグループ

の3つに分けました。

PRTでは、医師との遠隔セッション1回と、4週間で8回の心理療法が行われました。

内容は単純に、

「痛くないと思い込みましょう」

というものではありません。

痛みをどのくらい危険なものとして捉えているかを見直したり、身体の感覚を確認したり、恐怖を感じていた動作に取り組んだりする内容が含まれています。

その結果、治療終了後に痛みが0~10のうち「0または1」になった人は、

PRT群:50人中33人(66%)
プラセボ群:51人中10人(20%)
通常治療群:50人中5人(10%)

でした。

PRT群では平均的な痛みの強さも他の2群より低く、その差は1年後にも確認されています。

ここで、この「66%」だけが一人歩きしないようにすることも大切です。

この研究は、すべての慢性腰痛の方を対象にしたものではありません。研究では、痛みの原因について一定の条件を満たした方が参加しています。

この研究から考えたいのは、長引く腰痛の一部では「腰のどこが悪いのか」だけではなく、痛みをどう捉えているのか、身体を動かすことをどのくらい危険だと感じているのかにも目を向ける意味があるということです。

その効果は5年後にも残っていた

さらに2025年、この研究に参加した人たちの5年後を調べた結果が発表されました。

もとの151人のうち、113人が5年後の調査に参加しています。

PRT群で追跡できた38人のうち、痛みが0~1だった人は、

38人中21人(55%)

でした。

プラセボ群では39人中10人(26%)、通常治療群では36人中13人(36%)でした。

治療から5年後にも、PRT群では痛みが少ない状態を保っている人が多くみられました。

この研究では、痛みを「身体が傷ついているサイン」と捉える考えや、動くことで身体を傷めるのではないかという恐怖についても調べられています。

5年後にも、PRT群ではこうした考え方に違いがみられました。

痛みに対する捉え方や動作への恐怖に目を向けることが、長引く腰痛を考えるうえで一つの重要な視点になる可能性があります。

「動いても大丈夫」という経験が重要

ここからは、もう少し身近な例で考えてみましょう。

たとえば、

「立って前屈すると腰が痛い」

という方がいたとします。

まず実際に前屈してもらい、どのあたりで痛みが出るのか、どこまで動けるのかを確認します。

次に仰向けになり、脚を上げるなど、腰や股関節が曲がる方向を含む別の動きを確認します。

立った状態での前屈と、仰向けで脚を上げる動作は同じ動作ではありません。

それでも、立って前屈すると痛いのに、仰向けでは痛みなく身体を動かせる方がいます。

そんなときは、

「この方向に身体を動かすこと自体はできていますね」

「今の動きでは痛くありませんでしたね」

と、実際に安全に動けたことを本人と一緒に確認します。

その後、もう一度立って前屈してみます。

すると臨床では、先ほどより動きやすくなったり、痛みが軽くなったりすることがあります。

その場で起こる変化には、筋肉の緊張や身体の使い方などに加えて、

「また痛いはず」という予測
動作への恐怖
身体を守ろうとする反応
「実際に動いても大丈夫だった」という経験

などが関係している可能性があります。

大切なのは「脳を書き換えれば治る」と考えることではありません。

その場で起こった変化を手がかりに、

今の身体が実際には何をできるのか

を一つずつ確認していくことです。

だからといって「すべての腰痛は脳が原因」ではない

慢性腰痛について考えるときは、最初から一つの原因に決めつけないことが大切です。

確認したいポイントには、

・筋肉や関節などの状態
・身体の動きや可動域
・神経の状態
・痛みへの予測や恐怖
・睡眠や身体活動
・ストレスなどの生活状況

があります。

また、腰痛の中には骨折、感染症、炎症、神経障害、内臓などの病気が関係しているものもあります。

強い外傷後の痛み、発熱を伴う腰痛、進行するしびれや筋力低下、排尿・排便の異常などがある場合には、医療機関での評価が必要です。

「腰が痛いから腰だけ」でも、「慢性腰痛だから脳だけ」でもなく、その人の状態を総合的に確認する。

これが長引く腰痛を考えるうえで大切です。

よつ葉接骨院では「痛い場所」だけで判断しません

よつ葉接骨院・整体院では、「腰が痛いから腰だけを施術する」という考え方はしていません。

まず問診でこれまでの経過を伺い、姿勢や関節の動く範囲、身体の動き、筋肉の状態などを確認します。

特に大切にしているのが、

「何をすると痛いのか」と同時に、「何なら痛くないのか」を確認することです。

前屈では痛いけれど、別の姿勢なら身体を曲げられる。

ゆっくりなら動ける。

身体の使い方を少し変えると楽になる。

こうした違いも、現在の身体を知るための大切な情報です。

そして当院では腰だけではなく、必要に応じて頭部や首周辺から施術を始めることもあります。

慢性腰痛を調べた脳画像研究では、痛みの処理や身体の感覚、感情、注意などに関係する脳領域で、活動の仕方や血流のパターンに違いが報告されています。

これは単純に「脳の血流が悪いから腰が痛い」という話ではありません。

長く続く痛みには、腰の状態だけではなく、脳を含めた神経系の働きも関わっています。

だからこそ当院では、痛い腰だけにとらわれず、頭部や首周辺、筋肉、筋膜、関節、身体の動きなどを含めて全身をみることを大切にしています。

強い刺激を加えるのではなく、まず身体の力を抜きやすく、安心して動きやすい状態を目指します。

そして、

「ここまでは動かしても大丈夫だった」

「思っていたより動けた」

という経験を少しずつ積み重ねていく。

身体への施術と安全な動きの確認を組み合わせながら、その方に合った方法を一緒に考えていきます。

長く痛いからといって、ずっと壊れているとは限りません

慢性腰痛が続いていると、

「もう腰が悪くなっているから仕方ない」

「動かすともっと悪くなるのでは」

と不安になることがあります。

今回紹介した研究からも、長引く腰痛について考えるときには、身体の状態だけでなく、脳・神経系による痛みの処理、痛みへの予測や恐怖なども確認していくことが大切だと考えられます。

長く腰痛が続いているからといって、身体がずっと壊れ続けているとは限りません。

「どこが悪いのか」だけを探し続けるのではなく、

今は何をすると痛いのか。

何なら痛くないのか。

どこまでなら安心して動けるのか。

今の身体が実際にはどこまで動けるのかを確認することが、改善への一歩になることがあります。

なかなか治らない腰痛や、「前屈すると腰が痛くて動くのが怖い」といったお悩みが続いている方は、一度現在の身体の状態を確認してみませんか。

よつ葉接骨院・整体院では、痛い場所だけにとらわれず、身体全体の状態と日常生活の両方から、元気に過ごせる身体づくりを一緒に考えていきます。

参考文献

  1. Ashar YK, Gordon A, Schubiner H, et al. Effect of Pain Reprocessing Therapy vs Placebo and Usual Care for Patients With Chronic Back Pain: A Randomized Clinical Trial. JAMA Psychiatry. 2022;79(1):13-23. Published online September 29, 2021. doi:10.1001/jamapsychiatry.2021.2669. PMID: 34586357.
  2. Ashar YK, Low EL, Knight K, et al. Pain Reprocessing Therapy vs Placebo and Usual Care for Patients With Chronic Back Pain: 5-Year Follow-Up of a Randomized Clinical Trial. JAMA Psychiatry. 2025;82(10):1049-1051. doi:10.1001/jamapsychiatry.2025.1844. PMID: 40736996.

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執筆者紹介

宮寺 雅佳

執筆者:柔道整復師 宮寺 雅佳(よつ葉接骨院 院長)

臨床現場で19年以上、これまで3万人以上の方の身体のお悩みに向き合ってきました。

よつ葉接骨院では、「痛い場所だけにとらわれず、身体全体を見ること」を大切にしています。
腰痛や肩こりなどの不調は、痛みを感じている場所だけでなく、身体の動きや活動量、日々の過ごし方など、さまざまな要素が関係していることがあります。

そのため、問診や身体の動き、姿勢などを確認し、一人ひとりの状態に合わせて施術やセルフケアをご提案しています。

目指しているのは、痛みだけにとらわれず、その方が元気な毎日を送れるようサポートすること。
この記事も、医学的な情報をもとに、できるだけ分かりやすくお伝えすることを心がけて作成しています。

よつ葉接骨院 / よつ葉整体院(横浜市鶴見区・京急生麦駅徒歩1分)

肩こり・頭痛・腰痛・自律神経の乱れなど、慢性的な不調を中心に、一人ひとりの身体の状態に合わせた施術を行っています。

国家資格を持つ院長が、AI姿勢分析や可動域検査などを用いて原因を確認し、筋肉や関節だけでなく、身体全体のバランスを考慮した施術をご提供しています。

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